2007年08月22日
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜第08話
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
第08話「ひとつめのわかれ」
―― Matsuyuki View ――
「マツユキ! 正史郎さん!」
誰かが、ボクを呼んでいるようだが……頭がぼんやりとしていて、よくわからない。
「……うん……」
「マツユキ!」
次第に、目蓋に光を感じられるようになってきた。ゆっくりと目を開くと、カリンの泣き顔がぼんやりと浮かび上がった。
「カリンか……ということは、終わったんだね」
「うん。ごめんね、マツユキ……」
カリンが、謝罪の言葉を繰り返しながら泣き崩れる。
「何を泣いているのさ。ピンチなのは、いつものことじゃない」
確かに、今回は、本当に危なかったかもしれないが……
「うん。でもね……私、諦めようとしたの。どうにもならないって……諦めようとしたの……」
「……ふぅん……でも、ボクは助かったよ。諦めようとしたのかもしれないけど、諦めなかった。結局、諦めなかったんじゃないの?」
カリンは、瞳に浮かぶ涙を拭うことなく、ボクを抱きしめた。
すると、今度は、もう一つのうめき声が聞こえた。
「んん……」
声の方を見ると、正史郎が体を起こすところだった。
「正史郎さん!!!」
その瞬間、カリンは、ボクを大空へと放り投げた。
「うわぁぁ〜〜!」
ぽす! ぽむ! ポム!
ボクは、10mほど転がると、仰向けに倒れた。頭だけ起こしてカリンの方を見ると、正史郎に抱きついて、その胸に顔を埋めている。
ボクは、そのまま仰向けに寝転がり、星空に向かって呟いた。
「カリン……いくらなんでも、これは酷くないか?」
ボクは、カリンが落ち着くまで、星の光を眺めていた。
――――――――――
帰り道、カリンは、正史郎の背中で眠っていた。疲れたのだろう。気持ち良さそうに、寝息を立てている。そんなカリンを微笑みながら運ぶ正史郎に、ボクは、最後の挨拶をすることにした。
「正史郎。今まで、ありがとう。最後だから言うけど……ボクね。本当は、正史郎のこと、余り好きじゃなかったんだ」
「ははははは。ハッキリ言うね。まあ、そんな気はしていたけれど」
正史郎は、苦笑いを浮かべながら、ボクを見る。
「うん……でもね。嫌いだったわけじゃない。カリンが好きになった人だもん……嫌いになんか、なれないさ……」
「……そっか。マツユキくん。それじゃあ、私もハッキリ言おう。実はね。私も、君のこと、少し疎ましく思っていたんだよ」
「え……?」
正史郎は、いつでもボクに優しくしてくれていた。どうしても素気ない態度で接してしまう自分が、何度嫌になったことか。そんな正史郎が、ボクのことをそんな風に思っていたなんて……正直、意外だった。
「そんなに不思議かい? それじゃあ、考えてごらん? 学生時代、君は、カリンさんと、四六時中、ずーーーっと一緒にいたんだよ。それを羨ましいと思わないわけがないよ」
そういって、照れ笑いを浮かべた。
「ふーん。そっか。ボクたち、同じことを考えていたのかもしれないね」
「あれ? 知らなかったのかい?」
正史郎は、悪戯っぽく微笑んだ。
ボクは、この人が苦手だ。この人の優しい微笑みが苦手だ。どんなことでも、優しく包み込んでしまう。そんな人だから、ボクは、この人を嫌いになれない。
ボクの一番大切なものを奪い去った人だというのに……
だから、ボクは、右手を差し出した。正史郎は、黙って、ボクの手を握り返した。
正史郎と、始めて心が通じたような気がした。
「それじゃあ、正史郎。カリンをよろしく。あ……それから、明日になったら、カリンの机の……えっと、上から3番目の引き出し。開けるように伝えてくれる?」
「わかった」
正史郎は、肯いただけだった。でも、それで十分だ。
ボクは、そのまま背中を向けて歩き出した。
さてと。眠りにつく場所に向かうとしよう……
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
第08話「ひとつめのわかれ」
―― Matsuyuki View ――
「マツユキ! 正史郎さん!」
誰かが、ボクを呼んでいるようだが……頭がぼんやりとしていて、よくわからない。
「……うん……」
「マツユキ!」
次第に、目蓋に光を感じられるようになってきた。ゆっくりと目を開くと、カリンの泣き顔がぼんやりと浮かび上がった。
「カリンか……ということは、終わったんだね」
「うん。ごめんね、マツユキ……」
カリンが、謝罪の言葉を繰り返しながら泣き崩れる。
「何を泣いているのさ。ピンチなのは、いつものことじゃない」
確かに、今回は、本当に危なかったかもしれないが……
「うん。でもね……私、諦めようとしたの。どうにもならないって……諦めようとしたの……」
「……ふぅん……でも、ボクは助かったよ。諦めようとしたのかもしれないけど、諦めなかった。結局、諦めなかったんじゃないの?」
カリンは、瞳に浮かぶ涙を拭うことなく、ボクを抱きしめた。
すると、今度は、もう一つのうめき声が聞こえた。
「んん……」
声の方を見ると、正史郎が体を起こすところだった。
「正史郎さん!!!」
その瞬間、カリンは、ボクを大空へと放り投げた。
「うわぁぁ〜〜!」
ぽす! ぽむ! ポム!
ボクは、10mほど転がると、仰向けに倒れた。頭だけ起こしてカリンの方を見ると、正史郎に抱きついて、その胸に顔を埋めている。
ボクは、そのまま仰向けに寝転がり、星空に向かって呟いた。
「カリン……いくらなんでも、これは酷くないか?」
ボクは、カリンが落ち着くまで、星の光を眺めていた。
――――――――――
帰り道、カリンは、正史郎の背中で眠っていた。疲れたのだろう。気持ち良さそうに、寝息を立てている。そんなカリンを微笑みながら運ぶ正史郎に、ボクは、最後の挨拶をすることにした。
「正史郎。今まで、ありがとう。最後だから言うけど……ボクね。本当は、正史郎のこと、余り好きじゃなかったんだ」
「ははははは。ハッキリ言うね。まあ、そんな気はしていたけれど」
正史郎は、苦笑いを浮かべながら、ボクを見る。
「うん……でもね。嫌いだったわけじゃない。カリンが好きになった人だもん……嫌いになんか、なれないさ……」
「……そっか。マツユキくん。それじゃあ、私もハッキリ言おう。実はね。私も、君のこと、少し疎ましく思っていたんだよ」
「え……?」
正史郎は、いつでもボクに優しくしてくれていた。どうしても素気ない態度で接してしまう自分が、何度嫌になったことか。そんな正史郎が、ボクのことをそんな風に思っていたなんて……正直、意外だった。
「そんなに不思議かい? それじゃあ、考えてごらん? 学生時代、君は、カリンさんと、四六時中、ずーーーっと一緒にいたんだよ。それを羨ましいと思わないわけがないよ」
そういって、照れ笑いを浮かべた。
「ふーん。そっか。ボクたち、同じことを考えていたのかもしれないね」
「あれ? 知らなかったのかい?」
正史郎は、悪戯っぽく微笑んだ。
ボクは、この人が苦手だ。この人の優しい微笑みが苦手だ。どんなことでも、優しく包み込んでしまう。そんな人だから、ボクは、この人を嫌いになれない。
ボクの一番大切なものを奪い去った人だというのに……
だから、ボクは、右手を差し出した。正史郎は、黙って、ボクの手を握り返した。
正史郎と、始めて心が通じたような気がした。
「それじゃあ、正史郎。カリンをよろしく。あ……それから、明日になったら、カリンの机の……えっと、上から3番目の引き出し。開けるように伝えてくれる?」
「わかった」
正史郎は、肯いただけだった。でも、それで十分だ。
ボクは、そのまま背中を向けて歩き出した。
さてと。眠りにつく場所に向かうとしよう……
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目次
ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
・「プロローグ」
・第01回「ずっといっしょ……」
・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
・第03回「なでしこのことば」
・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
・第05回「ふたりのてのひら」
・第06回「ボクがきえるひ」
・第07回「にびいろのしずく」
・第08回「せいしろうとぼく」
・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
・「エピローグ」
・あとがき
冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
・「オー!ユッキー その3」
・「オー!ユッキー その2」
・「オー!ユッキー その1」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
・「ユキちゃんの一日」
・「ユキちゃんの一日 その2」
・「ユキちゃんの一日 その3」
・「ユキちゃんの一日 その4」
・「ユキちゃんの一日 その5」
・「ユキちゃんの一日 その6」
ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
・はじめに
・第01回「はじまり」
・第02回「たいへんたいへん」
・第03回「すもものムチャ」
・第04回「ふたりといっぴき」
・第05回「ほしのはな」
・第06回「すもものなみだ」
・第07回「りべんじ」
・第08回「ここはどこ?」
・第09回「ほしぞらのしたで……」
・第10回「さかないの?」
・第11回「みんなのねがい」
・最終回「キミにむけるほほえみ」
・あとがき
