2007年08月22日
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜第03話
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
第03話「なでしこのことば」
家に着くと、既に帰宅していたカリンが、笑顔で娘の帰りを迎え入れた。
「おかえりなさい。すももちゃん」
「うん。ただいま」
今日は、一段とすももの声のトーンが低い。そんな様子を見たカリンは、いつもより数割り増しの笑顔ですももに微笑みかける。
「すももちゃん。手を洗っていらっしゃい。ごはんにしましょう。今日は、ママ特製のオムライスよ!」
「っ!……うん!」
すももは、嬉しそうに靴を脱ぐと、バタバタと洗面所へと向かっていった。
――――――――――
食事を終え、一息ついたすももは、頬杖をつきながら、星の煌く夜空を眺めていた。きっと、八重野のことを考えているのだろう。ボクは、すももに問いかけることにした。
「すもも。目を閉じてごらん」
「目を?……うん」
すももは、素直にボクの言葉に従って瞳を閉じた。
「それじゃあ、すもも。ボクのこと、『怖い』って思う?」
「えっ? ユキちゃんが? どうして?」
すももは、ボクの質問に驚いたのか、目を開けてボクの方を向いた。
「あっ! すもも。目は、閉じたまま」
「う……うん」
すももは、再び目を閉じて、ボクの言葉に耳を傾ける。
「それじゃあ、もう一度聞くよ? ボクのこと、『怖い』って思う?」
「ううん。怖くないよ」
すももは、迷うことなく答えた。
「うん。じゃあ、八重野さんは? 八重野さんは、『怖い』かな?」
「…………ううん。怖くは……ない」
ボクの時より少し間があった。しかし、すももは、ハッキリと首を振った。
「それじゃあ、あの三人は?」
「……………………」
三人の姿が、すももの頭の中に浮かんでいるのだろう。答えを探して悩んでいるようだ。
ボクは、黙って、すももの答えを待つ。
数分経っただろうか……いや、実際は、数秒だったのかもしれない。とても長く感じられた沈黙の果てに、すももが出した答えは―
「少し……怖いかもしれない」
「少し?」
「うん。少し」
少し……か。それなら、
「ねぇ、すもも。その少しの怖さって、我慢出来ないかな?」
「怖さを……我慢するの?」
すももは、目を開けて、ボクの瞳を見つめた。
「うん」
ボクは、すももの小さな手の平に、自分の手を重ねた。
すももは、もう一度、瞳を閉じる。そして、自分に言い聞かせるように、小さく肯いた。
再び開いた目と、ボクの目が重なり合う。
「わたし、きっと、我慢出来る!」
その瞳に宿るものは、小さな女の子が作り出した、小さな勇気の輝きだった。
「うん!」
すももが微笑む。
ボクも微笑み返す。
そして、すももは、もう一つ、勇気を持つことが出来たようだ。
「ねぇ、ユキちゃん」
「うん?」
「わたし、八重野さんと、お友達になりたい!」
「……っ!……うん!!!」
嬉しさの余り、ボクは、すももに抱きつき、頬ずりをする。
「ユキちゃん、くすぐったいよ!」
ボクたちのささやかなじゃれあいを、星の微笑が包み込んでいた。
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
第03話「なでしこのことば」
家に着くと、既に帰宅していたカリンが、笑顔で娘の帰りを迎え入れた。
「おかえりなさい。すももちゃん」
「うん。ただいま」
今日は、一段とすももの声のトーンが低い。そんな様子を見たカリンは、いつもより数割り増しの笑顔ですももに微笑みかける。
「すももちゃん。手を洗っていらっしゃい。ごはんにしましょう。今日は、ママ特製のオムライスよ!」
「っ!……うん!」
すももは、嬉しそうに靴を脱ぐと、バタバタと洗面所へと向かっていった。
――――――――――
食事を終え、一息ついたすももは、頬杖をつきながら、星の煌く夜空を眺めていた。きっと、八重野のことを考えているのだろう。ボクは、すももに問いかけることにした。
「すもも。目を閉じてごらん」
「目を?……うん」
すももは、素直にボクの言葉に従って瞳を閉じた。
「それじゃあ、すもも。ボクのこと、『怖い』って思う?」
「えっ? ユキちゃんが? どうして?」
すももは、ボクの質問に驚いたのか、目を開けてボクの方を向いた。
「あっ! すもも。目は、閉じたまま」
「う……うん」
すももは、再び目を閉じて、ボクの言葉に耳を傾ける。
「それじゃあ、もう一度聞くよ? ボクのこと、『怖い』って思う?」
「ううん。怖くないよ」
すももは、迷うことなく答えた。
「うん。じゃあ、八重野さんは? 八重野さんは、『怖い』かな?」
「…………ううん。怖くは……ない」
ボクの時より少し間があった。しかし、すももは、ハッキリと首を振った。
「それじゃあ、あの三人は?」
「……………………」
三人の姿が、すももの頭の中に浮かんでいるのだろう。答えを探して悩んでいるようだ。
ボクは、黙って、すももの答えを待つ。
数分経っただろうか……いや、実際は、数秒だったのかもしれない。とても長く感じられた沈黙の果てに、すももが出した答えは―
「少し……怖いかもしれない」
「少し?」
「うん。少し」
少し……か。それなら、
「ねぇ、すもも。その少しの怖さって、我慢出来ないかな?」
「怖さを……我慢するの?」
すももは、目を開けて、ボクの瞳を見つめた。
「うん」
ボクは、すももの小さな手の平に、自分の手を重ねた。
すももは、もう一度、瞳を閉じる。そして、自分に言い聞かせるように、小さく肯いた。
再び開いた目と、ボクの目が重なり合う。
「わたし、きっと、我慢出来る!」
その瞳に宿るものは、小さな女の子が作り出した、小さな勇気の輝きだった。
「うん!」
すももが微笑む。
ボクも微笑み返す。
そして、すももは、もう一つ、勇気を持つことが出来たようだ。
「ねぇ、ユキちゃん」
「うん?」
「わたし、八重野さんと、お友達になりたい!」
「……っ!……うん!!!」
嬉しさの余り、ボクは、すももに抱きつき、頬ずりをする。
「ユキちゃん、くすぐったいよ!」
ボクたちのささやかなじゃれあいを、星の微笑が包み込んでいた。
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目次
ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
・「プロローグ」
・第01回「ずっといっしょ……」
・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
・第03回「なでしこのことば」
・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
・第05回「ふたりのてのひら」
・第06回「ボクがきえるひ」
・第07回「にびいろのしずく」
・第08回「せいしろうとぼく」
・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
・「エピローグ」
・あとがき
冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
・「オー!ユッキー その3」
・「オー!ユッキー その2」
・「オー!ユッキー その1」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
・「ユキちゃんの一日」
・「ユキちゃんの一日 その2」
・「ユキちゃんの一日 その3」
・「ユキちゃんの一日 その4」
・「ユキちゃんの一日 その5」
・「ユキちゃんの一日 その6」
ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
・はじめに
・第01回「はじまり」
・第02回「たいへんたいへん」
・第03回「すもものムチャ」
・第04回「ふたりといっぴき」
・第05回「ほしのはな」
・第06回「すもものなみだ」
・第07回「りべんじ」
・第08回「ここはどこ?」
・第09回「ほしぞらのしたで……」
・第10回「さかないの?」
・第11回「みんなのねがい」
・最終回「キミにむけるほほえみ」
・あとがき
