2007年08月22日

〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜第01話

ななついろ★ドロップス Short Story
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜


第01話「ずっといっしょ……」
 
 
 時刻は、早朝6:00を回ったところだ。夜明けの風は肌寒く、ボクは、体を震わせた。
 まだ、薄暗い朝日の中、ボクは、すももの部屋の前に立ち尽くす。まだ、眠っているのだろう。少し開いた扉から、小さな寝息が聞こえてくる。ボクは、そっと扉を押すと、すももの部屋へと体を滑り込ませた。
 部屋に入ったボクは、すももの眠るベッドに近づき、使い慣れた短い手足を駆使してよじ登る。ベッドの上に頭を出すと、丁度、目を覚ましたすももと目が合った。
「?……羊……さん?」
 すももは、動く羊のぬいぐるみの姿を見て、目を丸くしている。
 丁度いい。ボクは、驚かせついでに、用意してきた作り話を始めることにした。
「おはよう。すもも。ボクの名前は、マツユキ。ボクはね。『友達の妖精』なんだよ」
「……友達の……妖精さん?」
 目が覚めてきたのだろう。すももの瞳が、次第に輝きを帯びてきた。
「そう。友達の妖精。すももちゃんは、幼稚園に入ってから、お友達って出来たかな?」
「……ううん。まだ……」
 すももは、少しうつむき加減で、小さく首を振った。
「ボクはね。すももが、お友達を作るのを助けるために、妖精の国からやって来たんだ」
 すももは、体を起こすと、小さな手の平で、ボクを抱えあげた。
「えっとね。妖精さん。……まちゅゆき……まちゅ………まちゅ……………あうぅぅぅ……」
 『つ』が、上手く発音出来ないのか、すももの大きな瞳に、涙が浮かび始めた。
「……えっと……そうだ! ボクのことは、『ユキ』でいいよ」
「ユキ……ユキちゃん?…………ユキちゃん!」
「うん。それでいいよ」
 すももは、ボクのニックネームが気に入ったのか、『ユキちゃん』『ユキちゃん』と繰り返しながら、嬉しそうにクルクル回り始めた。
 やがて、ベッドの上にストンと座り込んだすももは、ボクにこう言った。
「あのね。ユキちゃん。わたし、ユキちゃんがいれば、他にお友達なんかいらないよ? だからね。わたしと、ずっと一緒にいて欲しいな……」
 すももの言葉に、ボクは、目を丸くする。何故、すももがそんなことを言うのか、全く理解出来なかった。
 すぐに返事をしなかったボクに不安を覚えたのか、すももの笑顔に影が射し始めた。
「ユキちゃん? 一緒にいてくれないの?」
 実際、ボクは、後3日しか、すももと一緒にいることが出来ない。
 でも……そうだな。ボクがいなくなっても、ボクについての記憶は、カリンが消してくれるはずだ。どの道、消える記憶なら、多少の嘘はかまわないだろう。
「ううん。ボクは、すももちゃんとずっと一緒にいるよ。でもね。それには、一つ条件があるんだ」
「じょう…けん?」
 言葉の意味がわからなかったのか、すももは、首をかしげている。
「あ……えっとね。すももちゃんが、幼稚園でお友達を作れば、ボクは、ずっと一緒にいられる。でもね。出来ないと、ボクは、いなくなってしまうんだ」
「ユキちゃん、いなくなっちゃうの?」
 すももは、『いなくなる』という言葉にだけ、過剰に反応してしまったようだ。
「すもも。ボクは、友達の妖精だって、言ったよね? ボクたちの仕事は、お友達がいない子に、お友達を作ってあげることなんだ。もし、そのお仕事が出来なかったら、妖精の国の王様に、連れ戻されてしまうんだよ……」
「わたしにお友達が出来ないと、ユキちゃん、いなくなっちゃうの?」
「そう。だからね。頑張れないかな? すもも一人じゃダメでも、ボクと二人でなら……ね?」
「……うん……」
 すももの中で、ボクと一緒にいたいと思う気持ちと、友達が出来るかどうか不安に思う気持ちが葛藤しているのだろう。
「ねえ、ユキちゃん。わたしにお友達が出来たら、本当に、ずっと一緒にいてくれる?」
「もちろんだよ」
 少し胸が痛んだが、ボクは、かまわず肯いた。
「それじゃあ…………わたし、頑張ってみる!」
 ようやく決意してくれたすももに、ボクは、安堵の溜め息を吐く。
 すももの言葉に、少し引っかかりを覚えたものの、やる気を出すように導くことが出来たのは、結果オーライといったところか。
 しかし、ボクは、すももの前でしか喋ることも、動くことも許されない。
 どうすれば、すももに友達が出来るか……
 ボクには、見当もつかなかった。

posted by はっぱ at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | SS
この記事へのコメント
学校や職場で仲間に入れない、友達が出来ない、人間関係でトラブルを抱えていませんか?みんなから愛される人間関係改善方法
Posted by 人間関係で悩んでいませんか? at 2007年10月23日 09:06
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目次

ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
  ・「プロローグ」
  ・第01回「ずっといっしょ……」
  ・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
  ・第03回「なでしこのことば」
  ・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
  ・第05回「ふたりのてのひら」
  ・第06回「ボクがきえるひ」
  ・第07回「にびいろのしずく」
  ・第08回「せいしろうとぼく」
  ・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
  ・「エピローグ」
  ・あとがき

冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
  ・「オー!ユッキー その3」
  ・「オー!ユッキー その2」
  ・「オー!ユッキー その1」

ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
  ・「ユキちゃんの一日」
  ・「ユキちゃんの一日 その2」
  ・「ユキちゃんの一日 その3」
  ・「ユキちゃんの一日 その4」
  ・「ユキちゃんの一日 その5」
  ・「ユキちゃんの一日 その6」

ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
  ・はじめに
  ・第01回「はじまり」
  ・第02回「たいへんたいへん」
  ・第03回「すもものムチャ」
  ・第04回「ふたりといっぴき」
  ・第05回「ほしのはな」
  ・第06回「すもものなみだ」
  ・第07回「りべんじ」
  ・第08回「ここはどこ?」
  ・第09回「ほしぞらのしたで……」
  ・第10回「さかないの?」
  ・第11回「みんなのねがい」
  ・最終回「キミにむけるほほえみ」
  ・あとがき