2007年06月03日
第11回「みんなのねがい」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第11回 「みんなのねがい」
「あ? あれ?」
何も起こらなかった。もう一度、ボタンを押してみるが、星が映し出されることはない。ボタンが違うのだろうか?
もう一度、一通りボタンを確認してみるが、それらしきスイッチは、『再生』と書かれたそのボタンしかない。
「あ? あれ?」
まずい……どうすれば動くかわからない……
「すもも。どこかに、マニュアルとかないかな?」
「マニュアル? えっと……机の下にある、これかな?」
机の下を覗くと、それらしきものが見える。俺は、机を降りると、それを引っ張り出そうと力を込める。
「ん……あれ? ふんっ…………はぁ……」
隙間にギッシリと本が詰まっていて、かなり硬くなっている。俺は、もう一度力を込める。
「この!…………う〜〜〜ん!」
「ユキちゃん!」
秋姫が、俺の体を引っ張る。そうか、秋姫、俺なら触れるのか。
「いくよ、すもも!」
「うん!」
「せ〜〜〜の!!!」
二人の声が重なる。しかし、今度は、俺の掴む手の方が耐えられなかった。
ゴロゴロゴロゴロ……ゴン!
俺は、そのまま後ろの壁まで転がった。肝心のマニュアルは……何事もなかったかのように、隙間に挟まったままだ。今の俺の手では、掴み続けるのも難しいようだ。
しかし、諦めるわけにはいかない。俺は、もう一度力を込める。しかし、やはり上手くいかない。
そこへ、展望室にいたはずの、少年が入ってきた。少年は、俺を抱えると、
「ありがとう、ひつじ君。後は、任せて」
そういうと、少年は、机の下にしゃがみ、マニュアルを引っ張り出す。
その中から、投影機の写真が載ったものを開く。
「……これかな?」
少年がマニュアルを見ながらボタンを押すと、投影室を映すモニターが暗くなった。投影室の電気が消えたようだ。少年がそのまま操作を続けると、投影室が、ぼんやりと明るくなり始めた。そこに、無数の星がきらめき始める。
「よし! 行くよ!!」
少年は、俺を抱えて走り出した。秋姫も、後をついてくる。
投影室に着くと、天井に映し出された星の光が、星の花を照らしている。少年が、少女の下へと辿り着くと、枯れかけていた蕾が元の色を取り戻し、少しずつ開き始めた。蕾の中から光が生まれ、少女の体を包み始めた。少女は、柔らかな光の中で、そっと目をつぶる。
花が…………咲いた!
星の花の光が、一際輝きを増す。俺たちは、その光に願いをかける。
少年は願った。『不治の病から、この少女を解放して欲しい』と。
少女は願った。『少年と供に歩む未来が欲しい』と。
そして、俺と秋姫は願った。『二人の未来に、祝福を―』
星の花の輝きが、より一層強くなる。そこにあるもの全てを、花の光が埋め尽くす。不思議と眩しさを感じない。優しさに満ち溢れた光だ。
やがて、星の花の輝きが治まった。少年たちに目を向けると、二人は、寄り添うように眠っていた。少女を見ると、青白くくすんでいた頬に赤みが差したように見える。願いは、叶ったのだろうか? いや。叶ったのだろう。少年と少女の浮かべる微笑が、その答えだ。
「すもも。それじゃあ、最後に……」
「うん」
秋姫は、レードルを取り出すと、少年と少女の頭を優しく撫でる。
「ごめんなさい。わたしたちのこと、忘れてください」
すると、今度は、俺たちの周りに光が満ちる。元の世界に帰れるのだろう。
俺と秋姫は、そっと目をつぶった。
ありがとう―
そんな少女の声が聞こえたような気がした。
――――――――――
目を開けると、虹の光に包まれる前の風景に戻っていた。目の前に虹のしずくが浮かんでいる。隣には、秋姫の姿もある。無事に戻ることが出来たようだ。お互い、無言で微笑み合う。今は、それだけで十分だ。
ふと、足元に、虹のしずくではない光が目に入った。
「ユキちゃん! 足元!」
秋姫も気付いたのか、声を上げる。
「うん。これ……」
そこには、星の形をした種が一粒。間違いない。星の種だ。空を見上げると、満天の星空。目の前には、虹のしずく。条件は、揃った。
秋姫が、虹のしずくにレードルを向ける。今度は、動かずにじっとしている。
プルヴ・ラディ
秋姫は、今日、二度目になるその言葉を口にする。今まで、何度も聞いてきた言葉だが、なんだか、今までで、最も想いが込められているような気がした。
秋姫は、すくったしずくを星の種に降りかける。種は、見る間に蕾を付けると、やがて、星の花を咲かせた。花の光は、優しく俺を包み込む。
秋姫が、星の花に願う。
「ユキちゃんを……ユキちゃんを、助けてください!」
「すもも……」
秋姫の言葉には、誰よりも強い願いが込められていた。そんな秋姫の想いに、俺は、一瞬願うことを忘れる。もしかしたら、俺自身よりも、俺のことを心配してくれているのかもしれない……
星の花の光が輝きを増し、俺の全てを包み込む。まるで、秋姫の胸の中にいるような錯覚に陥る。俺は、光に身をゆだねると、そっと目をつぶった。
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第11回 「みんなのねがい」
「あ? あれ?」
何も起こらなかった。もう一度、ボタンを押してみるが、星が映し出されることはない。ボタンが違うのだろうか?
もう一度、一通りボタンを確認してみるが、それらしきスイッチは、『再生』と書かれたそのボタンしかない。
「あ? あれ?」
まずい……どうすれば動くかわからない……
「すもも。どこかに、マニュアルとかないかな?」
「マニュアル? えっと……机の下にある、これかな?」
机の下を覗くと、それらしきものが見える。俺は、机を降りると、それを引っ張り出そうと力を込める。
「ん……あれ? ふんっ…………はぁ……」
隙間にギッシリと本が詰まっていて、かなり硬くなっている。俺は、もう一度力を込める。
「この!…………う〜〜〜ん!」
「ユキちゃん!」
秋姫が、俺の体を引っ張る。そうか、秋姫、俺なら触れるのか。
「いくよ、すもも!」
「うん!」
「せ〜〜〜の!!!」
二人の声が重なる。しかし、今度は、俺の掴む手の方が耐えられなかった。
ゴロゴロゴロゴロ……ゴン!
俺は、そのまま後ろの壁まで転がった。肝心のマニュアルは……何事もなかったかのように、隙間に挟まったままだ。今の俺の手では、掴み続けるのも難しいようだ。
しかし、諦めるわけにはいかない。俺は、もう一度力を込める。しかし、やはり上手くいかない。
そこへ、展望室にいたはずの、少年が入ってきた。少年は、俺を抱えると、
「ありがとう、ひつじ君。後は、任せて」
そういうと、少年は、机の下にしゃがみ、マニュアルを引っ張り出す。
その中から、投影機の写真が載ったものを開く。
「……これかな?」
少年がマニュアルを見ながらボタンを押すと、投影室を映すモニターが暗くなった。投影室の電気が消えたようだ。少年がそのまま操作を続けると、投影室が、ぼんやりと明るくなり始めた。そこに、無数の星がきらめき始める。
「よし! 行くよ!!」
少年は、俺を抱えて走り出した。秋姫も、後をついてくる。
投影室に着くと、天井に映し出された星の光が、星の花を照らしている。少年が、少女の下へと辿り着くと、枯れかけていた蕾が元の色を取り戻し、少しずつ開き始めた。蕾の中から光が生まれ、少女の体を包み始めた。少女は、柔らかな光の中で、そっと目をつぶる。
花が…………咲いた!
星の花の光が、一際輝きを増す。俺たちは、その光に願いをかける。
少年は願った。『不治の病から、この少女を解放して欲しい』と。
少女は願った。『少年と供に歩む未来が欲しい』と。
そして、俺と秋姫は願った。『二人の未来に、祝福を―』
星の花の輝きが、より一層強くなる。そこにあるもの全てを、花の光が埋め尽くす。不思議と眩しさを感じない。優しさに満ち溢れた光だ。
やがて、星の花の輝きが治まった。少年たちに目を向けると、二人は、寄り添うように眠っていた。少女を見ると、青白くくすんでいた頬に赤みが差したように見える。願いは、叶ったのだろうか? いや。叶ったのだろう。少年と少女の浮かべる微笑が、その答えだ。
「すもも。それじゃあ、最後に……」
「うん」
秋姫は、レードルを取り出すと、少年と少女の頭を優しく撫でる。
「ごめんなさい。わたしたちのこと、忘れてください」
すると、今度は、俺たちの周りに光が満ちる。元の世界に帰れるのだろう。
俺と秋姫は、そっと目をつぶった。
ありがとう―
そんな少女の声が聞こえたような気がした。
――――――――――
目を開けると、虹の光に包まれる前の風景に戻っていた。目の前に虹のしずくが浮かんでいる。隣には、秋姫の姿もある。無事に戻ることが出来たようだ。お互い、無言で微笑み合う。今は、それだけで十分だ。
ふと、足元に、虹のしずくではない光が目に入った。
「ユキちゃん! 足元!」
秋姫も気付いたのか、声を上げる。
「うん。これ……」
そこには、星の形をした種が一粒。間違いない。星の種だ。空を見上げると、満天の星空。目の前には、虹のしずく。条件は、揃った。
秋姫が、虹のしずくにレードルを向ける。今度は、動かずにじっとしている。
プルヴ・ラディ
秋姫は、今日、二度目になるその言葉を口にする。今まで、何度も聞いてきた言葉だが、なんだか、今までで、最も想いが込められているような気がした。
秋姫は、すくったしずくを星の種に降りかける。種は、見る間に蕾を付けると、やがて、星の花を咲かせた。花の光は、優しく俺を包み込む。
秋姫が、星の花に願う。
「ユキちゃんを……ユキちゃんを、助けてください!」
「すもも……」
秋姫の言葉には、誰よりも強い願いが込められていた。そんな秋姫の想いに、俺は、一瞬願うことを忘れる。もしかしたら、俺自身よりも、俺のことを心配してくれているのかもしれない……
星の花の光が輝きを増し、俺の全てを包み込む。まるで、秋姫の胸の中にいるような錯覚に陥る。俺は、光に身をゆだねると、そっと目をつぶった。
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目次
ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
・「プロローグ」
・第01回「ずっといっしょ……」
・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
・第03回「なでしこのことば」
・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
・第05回「ふたりのてのひら」
・第06回「ボクがきえるひ」
・第07回「にびいろのしずく」
・第08回「せいしろうとぼく」
・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
・「エピローグ」
・あとがき
冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
・「オー!ユッキー その3」
・「オー!ユッキー その2」
・「オー!ユッキー その1」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
・「ユキちゃんの一日」
・「ユキちゃんの一日 その2」
・「ユキちゃんの一日 その3」
・「ユキちゃんの一日 その4」
・「ユキちゃんの一日 その5」
・「ユキちゃんの一日 その6」
ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
・はじめに
・第01回「はじまり」
・第02回「たいへんたいへん」
・第03回「すもものムチャ」
・第04回「ふたりといっぴき」
・第05回「ほしのはな」
・第06回「すもものなみだ」
・第07回「りべんじ」
・第08回「ここはどこ?」
・第09回「ほしぞらのしたで……」
・第10回「さかないの?」
・第11回「みんなのねがい」
・最終回「キミにむけるほほえみ」
・あとがき
