2007年06月03日
第10回「さかないの?」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第10回 「さかないの?」
星の花が、その花を咲かせようとした瞬間、突然、星空に雲がかかり始めた。星の花は、時間を止めたように、蕾のまま花を開こうとしない。
すぐに、雨が降り始めた。降り出した雨は、雷雨となり少年たちの体を濡らす。少年は、蕾のままの花を掴むと、少女を連れて、雨宿りが出来そうな場所を探す。すぐ側に、緑の生い茂る大きな木が見つかった。少年たちは、その下に身を潜める。
「きっと、通り雨だから、すぐに止むよ。少し待とう」
少年の言葉が、不安げな少女の心を励ます。
しかし、雨が止む気配は、一向に訪れない。そろそろ一時間を過ぎる頃だろうか。
何かに気付いたのか、秋姫が、目を見開く。
「ユキちゃん! 星の花が!」
秋姫の指差す先を見ると、花を咲かせる前の蕾が枯れ始めている。
ふと、少年の言葉を思い出した。
『星の種はね。たくさんの星の下で、花を咲かせるんだって』
「もしかして、星が見えないと、花が咲かない? それどころか、そのまま枯れてしまう!?」
少年たちも、花の様子に気付いたのか、慌て始めたようだ。
しかし、降り出した雨は、止むどころか、強さを増しているようにすら感じる。
早く、星が見える場所へ行かなければ…………ん? 星が見える場所?
「すもも!」
「うん!」
どうやら、秋姫も気付いたようだ。
「プラネタリウム!」
秋姫と声が揃う。本当の星の光ではないかもしれないが、今は、それにかけるしかない。
「でも、どうやって、あそこまであの二人を連れて行くの?」
「うん。それはね……」
題して、
『星の花★大作戦!パート2〜時間ひつじがこんにちは〜』(命名:秋姫すもも)
……秋姫のネーミングセンスは、破滅的だった。
――――――――――
俺を抱えた秋姫が、少年たちの前に降り立つ。少年たちが、俺の姿に気付く。
「昨日のぬいぐるみ?」
少年たちは、宙を浮いている(ように見える)俺の姿を、訝しげに見守る。
俺が、プラネタリウムの方向を指差すと、秋姫が動き出す。ウサギのように跳ね回る姿を演出しながら、ジグザクに走り抜ける。
俺は、抱いて走るだけでいいと思ったのだが、どうも秋姫のこだわりらしい。
少女が、少年の袖を引くと、俺の方を指差す。
「……ついていくか?」
少女が、うなずく。
少年たちがついてくるのを確認すると、
ヴィム・コミティ・アクア
秋姫の言葉が、少年たちを淡い光で包み込む。これで、雨に濡れることもないだろう。
次々に起こる不思議な体験に、少年は戸惑いを隠せないようだが、少女の方は、楽しんでいるかのように見える。
やがて、プラネタリウムに辿り着く。秋姫は、壁をすり抜けていくが、
ゴン!
当然、俺は、壁に頭をぶつけることになった。
「っ! ごめんなさい! ユキちゃん」
「あ……ああ……だい、じょう、ぶ」
この世界で実体のない秋姫は、壁を通り抜けるのに慣れてしまったようだ。
プログリーディア
以前、プラネタリウムに入ったときに使ったその言葉で、秋姫が道を作る。
俺は、少年たちに手招きをしながら、壁の中へと消えていった。
――――――――――
プラネタリウムの中は、闇に包まれていた。視覚の失われたその空間で、秋姫の手の温もりだけが、俺の存在を確かなものとしている。
ルーチェ・ルヴィ・アヴィス
秋姫の魔法が、辺りを照らし出す。
「すもも。あの星を映す機械、動かさないと」
「うん」
秋姫は、俺を抱えて投影機の制御室を探し始める。奥へ進むと、それらしき部屋が見えた。中に入ると、たくさんのモニターとスイッチが見える。
「ユキちゃん。わかる?」
「うーん。これかな?」
手始めに、『ON/OFF』と書かれたスイッチを入れてみる。すると、機械の動作音が響き始めた。モニターに電源が入り、投影室が映し出された。その中心に、少年と少女の姿が見える。どうやら、中に入れたようだ。少年は、星の花を部屋の中心に置くと、星を映し出す丸い天井を見上げる。少女も、それに倣う。
「それじゃあ」
「うん」
俺は、『再生』とあるボタンを押した。
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第10回 「さかないの?」
星の花が、その花を咲かせようとした瞬間、突然、星空に雲がかかり始めた。星の花は、時間を止めたように、蕾のまま花を開こうとしない。
すぐに、雨が降り始めた。降り出した雨は、雷雨となり少年たちの体を濡らす。少年は、蕾のままの花を掴むと、少女を連れて、雨宿りが出来そうな場所を探す。すぐ側に、緑の生い茂る大きな木が見つかった。少年たちは、その下に身を潜める。
「きっと、通り雨だから、すぐに止むよ。少し待とう」
少年の言葉が、不安げな少女の心を励ます。
しかし、雨が止む気配は、一向に訪れない。そろそろ一時間を過ぎる頃だろうか。
何かに気付いたのか、秋姫が、目を見開く。
「ユキちゃん! 星の花が!」
秋姫の指差す先を見ると、花を咲かせる前の蕾が枯れ始めている。
ふと、少年の言葉を思い出した。
『星の種はね。たくさんの星の下で、花を咲かせるんだって』
「もしかして、星が見えないと、花が咲かない? それどころか、そのまま枯れてしまう!?」
少年たちも、花の様子に気付いたのか、慌て始めたようだ。
しかし、降り出した雨は、止むどころか、強さを増しているようにすら感じる。
早く、星が見える場所へ行かなければ…………ん? 星が見える場所?
「すもも!」
「うん!」
どうやら、秋姫も気付いたようだ。
「プラネタリウム!」
秋姫と声が揃う。本当の星の光ではないかもしれないが、今は、それにかけるしかない。
「でも、どうやって、あそこまであの二人を連れて行くの?」
「うん。それはね……」
題して、
『星の花★大作戦!パート2〜時間ひつじがこんにちは〜』(命名:秋姫すもも)
……秋姫のネーミングセンスは、破滅的だった。
――――――――――
俺を抱えた秋姫が、少年たちの前に降り立つ。少年たちが、俺の姿に気付く。
「昨日のぬいぐるみ?」
少年たちは、宙を浮いている(ように見える)俺の姿を、訝しげに見守る。
俺が、プラネタリウムの方向を指差すと、秋姫が動き出す。ウサギのように跳ね回る姿を演出しながら、ジグザクに走り抜ける。
俺は、抱いて走るだけでいいと思ったのだが、どうも秋姫のこだわりらしい。
少女が、少年の袖を引くと、俺の方を指差す。
「……ついていくか?」
少女が、うなずく。
少年たちがついてくるのを確認すると、
ヴィム・コミティ・アクア
秋姫の言葉が、少年たちを淡い光で包み込む。これで、雨に濡れることもないだろう。
次々に起こる不思議な体験に、少年は戸惑いを隠せないようだが、少女の方は、楽しんでいるかのように見える。
やがて、プラネタリウムに辿り着く。秋姫は、壁をすり抜けていくが、
ゴン!
当然、俺は、壁に頭をぶつけることになった。
「っ! ごめんなさい! ユキちゃん」
「あ……ああ……だい、じょう、ぶ」
この世界で実体のない秋姫は、壁を通り抜けるのに慣れてしまったようだ。
プログリーディア
以前、プラネタリウムに入ったときに使ったその言葉で、秋姫が道を作る。
俺は、少年たちに手招きをしながら、壁の中へと消えていった。
――――――――――
プラネタリウムの中は、闇に包まれていた。視覚の失われたその空間で、秋姫の手の温もりだけが、俺の存在を確かなものとしている。
ルーチェ・ルヴィ・アヴィス
秋姫の魔法が、辺りを照らし出す。
「すもも。あの星を映す機械、動かさないと」
「うん」
秋姫は、俺を抱えて投影機の制御室を探し始める。奥へ進むと、それらしき部屋が見えた。中に入ると、たくさんのモニターとスイッチが見える。
「ユキちゃん。わかる?」
「うーん。これかな?」
手始めに、『ON/OFF』と書かれたスイッチを入れてみる。すると、機械の動作音が響き始めた。モニターに電源が入り、投影室が映し出された。その中心に、少年と少女の姿が見える。どうやら、中に入れたようだ。少年は、星の花を部屋の中心に置くと、星を映し出す丸い天井を見上げる。少女も、それに倣う。
「それじゃあ」
「うん」
俺は、『再生』とあるボタンを押した。
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目次
ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
・「プロローグ」
・第01回「ずっといっしょ……」
・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
・第03回「なでしこのことば」
・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
・第05回「ふたりのてのひら」
・第06回「ボクがきえるひ」
・第07回「にびいろのしずく」
・第08回「せいしろうとぼく」
・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
・「エピローグ」
・あとがき
冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
・「オー!ユッキー その3」
・「オー!ユッキー その2」
・「オー!ユッキー その1」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
・「ユキちゃんの一日」
・「ユキちゃんの一日 その2」
・「ユキちゃんの一日 その3」
・「ユキちゃんの一日 その4」
・「ユキちゃんの一日 その5」
・「ユキちゃんの一日 その6」
ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
・はじめに
・第01回「はじまり」
・第02回「たいへんたいへん」
・第03回「すもものムチャ」
・第04回「ふたりといっぴき」
・第05回「ほしのはな」
・第06回「すもものなみだ」
・第07回「りべんじ」
・第08回「ここはどこ?」
・第09回「ほしぞらのしたで……」
・第10回「さかないの?」
・第11回「みんなのねがい」
・最終回「キミにむけるほほえみ」
・あとがき
