2007年06月03日
第03回「すもものムチャ」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第03回 「すもものムチャ」
月明かりに照らされる展望台は、ひっそりと静まり返っていた。秋姫が来ているはずだが、物音一つ聞こえない。目を凝らして秋姫の姿を捜す。すると、微かに踊るような光が見えた。星のしずくだろうか?
近づくと、光の中心に人影が見えてきた。どうやら秋姫のようだ。しかし、動く気配がない。
「すもも!」
俺は、真っ直ぐに秋姫の下へと駆けつけた。秋姫は、うつぶせに倒れ、荒い呼吸を繰り返していた。
「すもも! すもも!」
「……ん……ユキ……ちゃん」
「すもも!……無理するから!」
意識はあるようだが、明らかに先ほどよりも悪化している。早く帰って休ませなければ。
「ユキちゃん……待っててね……星のしずく、今、すくうから……」
「すもも! そんなのいいから!」
「ううん。良くないよ……」
そういって立ち上がろうとする秋姫に反応したのか、星のしずくが動き出す。そのしずくは、普段のものとは違い、常になないろに輝いているのか、その軌跡に残る光が虹を作り出す。
しずくを追う為か、秋姫は、しずくの方に体を向けると、もう一度立ち上がろうとするが、すぐに倒れてしまう。もう、立ち上がる力ですら残っていないようだ。
「すもも! お願いだから、動かないで!」
いっそのこと、消えてしまえばいい……そうすれば、秋姫も大人しくしてくれるだろう。
ふと願った俺の想いに答えるように、星のしずくが動きを止めると、そのまま姿を消していった。
「あ……」
秋姫は、緊張の糸が切れたのか、地面に倒れ込む。
「すもも!」
俺は、秋姫の肩を揺すりながら、秋姫の名前を呼び続ける。
俺の声に反応はするものの、動く力は残っていないようだ。俺の力で秋姫を運ぶのは、到底不可能だ。
「ボク、ナコちゃん呼んで来るから、少し待ってて。いい? 動いちゃダメだよ」
秋姫の返事を聞く前に、俺は八重野の家を目指す。
秋姫を家まで連れて行く。そんなことすら出来ない、今の自分の体に苛立ちを覚えた。
――――――――――
秋姫のことを話すと、八重野は、何も言わずに駆けつけてくれた。
「すもも! 大丈夫?」
「ナコ……ちゃん?」
「ほら。背中に乗って」
「……でも……」
「いいから、乗って!」
八重野は、背中を向けて、少し強い口調で繰り返す。秋姫が、ビクリと体を強張らせる。
「すもも……ほら……」
「……うん……ごめんね。ナコちゃん……」
秋姫が、八重野の背中に寄りかかる。
「すもも。私の家の方が近いから、とりあえず、そっちに行く。ひつじ君もいいね?」
「うん。お願い」
俺の答えと同時に、八重野が歩き出す。俺も本に乗り、八重野に続く。
微かになないろの輝きが見えたような気がした。
――――――――――
八重野の家に着いた俺たちは、まず、秋姫を寝かせることにした。
「酷い熱……」
八重野は、席を立つと、洗面器とタオルと氷を持って戻ってきた。
「すもも。今日は、家に泊まっていって。おじさんには連絡しておく」
「……うん。ごめんね。ナコちゃん」
よほど疲れていたのか、秋姫は、苦しげな表情を浮かべながらも、すぐに寝息を立て始めた。
八重野は、氷水で冷やしたタオルを秋姫の額に乗せると、俺に問いかけてきた。
「……ひつじ君。どうして、すももに無理させたの?」
「……うん。ごめんなさい。今日、すももの家に行くのが、少し遅れたんだ。着いた時には、もう居なくて……」
「……そう。それなら、ひつじ君が謝ることない。疑ってごめんなさい。それから、知らせてくれてありがとう」
「あ……うん……でも……やっぱり、ごめんなさい」
「……それじゃあ、今日は、ずっとすもものそばに居てあげてくれる?」
そういって、八重野は、俺の頭を撫でる。
「……うん」
俺が頷くと、八重野は微笑んで、そっと部屋を出て行った。
秋姫と二人きりになった俺は、秋姫の顔を覗き込んでみる。かなり苦しそうだ。
さっき、八重野が額に被せたタオルを触ってみると、すでに熱を持ち始めていた。俺は、タオルを取ると、氷水に浸す。
「っ! 冷たっ……」
余りの冷たさに、手を引っ込める。
「八重野、こんなのに手を浸していたのか……」
俺は、再び氷水に手を浸す。思ったように動かない、小さな自分の手足がもどかしい。それでも、なんとかタオルを絞ることが出来た。
それを秋姫の額に乗せると、俺は、秋姫に囁きかける。
「すもも……お願いだから、頑張りすぎないで……すももが倒れるくらいなら、ボクは、このままでも……」
俺の声が聞こえたのか、秋姫の小さな手が、何かを求め空をさまよう。俺は、熱を持ったその手を握り、早く良くなるようにと願うことしか出来なかった。
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
第03回 「すもものムチャ」
月明かりに照らされる展望台は、ひっそりと静まり返っていた。秋姫が来ているはずだが、物音一つ聞こえない。目を凝らして秋姫の姿を捜す。すると、微かに踊るような光が見えた。星のしずくだろうか?
近づくと、光の中心に人影が見えてきた。どうやら秋姫のようだ。しかし、動く気配がない。
「すもも!」
俺は、真っ直ぐに秋姫の下へと駆けつけた。秋姫は、うつぶせに倒れ、荒い呼吸を繰り返していた。
「すもも! すもも!」
「……ん……ユキ……ちゃん」
「すもも!……無理するから!」
意識はあるようだが、明らかに先ほどよりも悪化している。早く帰って休ませなければ。
「ユキちゃん……待っててね……星のしずく、今、すくうから……」
「すもも! そんなのいいから!」
「ううん。良くないよ……」
そういって立ち上がろうとする秋姫に反応したのか、星のしずくが動き出す。そのしずくは、普段のものとは違い、常になないろに輝いているのか、その軌跡に残る光が虹を作り出す。
しずくを追う為か、秋姫は、しずくの方に体を向けると、もう一度立ち上がろうとするが、すぐに倒れてしまう。もう、立ち上がる力ですら残っていないようだ。
「すもも! お願いだから、動かないで!」
いっそのこと、消えてしまえばいい……そうすれば、秋姫も大人しくしてくれるだろう。
ふと願った俺の想いに答えるように、星のしずくが動きを止めると、そのまま姿を消していった。
「あ……」
秋姫は、緊張の糸が切れたのか、地面に倒れ込む。
「すもも!」
俺は、秋姫の肩を揺すりながら、秋姫の名前を呼び続ける。
俺の声に反応はするものの、動く力は残っていないようだ。俺の力で秋姫を運ぶのは、到底不可能だ。
「ボク、ナコちゃん呼んで来るから、少し待ってて。いい? 動いちゃダメだよ」
秋姫の返事を聞く前に、俺は八重野の家を目指す。
秋姫を家まで連れて行く。そんなことすら出来ない、今の自分の体に苛立ちを覚えた。
――――――――――
秋姫のことを話すと、八重野は、何も言わずに駆けつけてくれた。
「すもも! 大丈夫?」
「ナコ……ちゃん?」
「ほら。背中に乗って」
「……でも……」
「いいから、乗って!」
八重野は、背中を向けて、少し強い口調で繰り返す。秋姫が、ビクリと体を強張らせる。
「すもも……ほら……」
「……うん……ごめんね。ナコちゃん……」
秋姫が、八重野の背中に寄りかかる。
「すもも。私の家の方が近いから、とりあえず、そっちに行く。ひつじ君もいいね?」
「うん。お願い」
俺の答えと同時に、八重野が歩き出す。俺も本に乗り、八重野に続く。
微かになないろの輝きが見えたような気がした。
――――――――――
八重野の家に着いた俺たちは、まず、秋姫を寝かせることにした。
「酷い熱……」
八重野は、席を立つと、洗面器とタオルと氷を持って戻ってきた。
「すもも。今日は、家に泊まっていって。おじさんには連絡しておく」
「……うん。ごめんね。ナコちゃん」
よほど疲れていたのか、秋姫は、苦しげな表情を浮かべながらも、すぐに寝息を立て始めた。
八重野は、氷水で冷やしたタオルを秋姫の額に乗せると、俺に問いかけてきた。
「……ひつじ君。どうして、すももに無理させたの?」
「……うん。ごめんなさい。今日、すももの家に行くのが、少し遅れたんだ。着いた時には、もう居なくて……」
「……そう。それなら、ひつじ君が謝ることない。疑ってごめんなさい。それから、知らせてくれてありがとう」
「あ……うん……でも……やっぱり、ごめんなさい」
「……それじゃあ、今日は、ずっとすもものそばに居てあげてくれる?」
そういって、八重野は、俺の頭を撫でる。
「……うん」
俺が頷くと、八重野は微笑んで、そっと部屋を出て行った。
秋姫と二人きりになった俺は、秋姫の顔を覗き込んでみる。かなり苦しそうだ。
さっき、八重野が額に被せたタオルを触ってみると、すでに熱を持ち始めていた。俺は、タオルを取ると、氷水に浸す。
「っ! 冷たっ……」
余りの冷たさに、手を引っ込める。
「八重野、こんなのに手を浸していたのか……」
俺は、再び氷水に手を浸す。思ったように動かない、小さな自分の手足がもどかしい。それでも、なんとかタオルを絞ることが出来た。
それを秋姫の額に乗せると、俺は、秋姫に囁きかける。
「すもも……お願いだから、頑張りすぎないで……すももが倒れるくらいなら、ボクは、このままでも……」
俺の声が聞こえたのか、秋姫の小さな手が、何かを求め空をさまよう。俺は、熱を持ったその手を握り、早く良くなるようにと願うことしか出来なかった。
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目次
ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
・「プロローグ」
・第01回「ずっといっしょ……」
・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
・第03回「なでしこのことば」
・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
・第05回「ふたりのてのひら」
・第06回「ボクがきえるひ」
・第07回「にびいろのしずく」
・第08回「せいしろうとぼく」
・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
・「エピローグ」
・あとがき
冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
・「オー!ユッキー その3」
・「オー!ユッキー その2」
・「オー!ユッキー その1」
ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
・「ユキちゃんの一日」
・「ユキちゃんの一日 その2」
・「ユキちゃんの一日 その3」
・「ユキちゃんの一日 その4」
・「ユキちゃんの一日 その5」
・「ユキちゃんの一日 その6」
ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
・はじめに
・第01回「はじまり」
・第02回「たいへんたいへん」
・第03回「すもものムチャ」
・第04回「ふたりといっぴき」
・第05回「ほしのはな」
・第06回「すもものなみだ」
・第07回「りべんじ」
・第08回「ここはどこ?」
・第09回「ほしぞらのしたで……」
・第10回「さかないの?」
・第11回「みんなのねがい」
・最終回「キミにむけるほほえみ」
・あとがき
