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2007年06月09日

ユキちゃんの一日 その2

ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日 その2」〜
 
 目が覚めると、ユキちゃんさんは、すももちゃんの胸に抱かれていました。時計を見ると、朝の5時を回ったところです。
「そろそろ行くか……」
 そういうと、ユキちゃんさんは、すももちゃんの腕を退けようと、力を込めます。
「ふんっ!」
 ユキちゃんさんが力を入れた瞬間、すももちゃんが、大きく息を吐きました。
「ふぅ――」
 
 ビク!
 
 知ってか知らずか、すももちゃんの温かい吐息が、ユキちゃんさんの耳をくすぐります。ユキちゃんさんは、体中の力が抜けてしまうのでした。
 しかし、こんなことで諦める訳にはいきません。ユキちゃんさんは、再び、すももちゃんの腕を退けようと、力を込めました。
「ふんっ!!」
 ユキちゃんさんが力を入れた瞬間、またもやすももちゃんが、大きく息を吐きました。
「はふぅ――」
 
 ビク!ビク!!
 
 すももちゃんの甘い吐息に、ユキちゃんさんの体は、数秒間、時間を止めるのでした。
 体が動くようになると、ユキちゃんさんは、負けじと腕に力を込めます。
「いやっ!!!」
「ほふぅ――」
 
 ビク!
 
「ほわっ!!!!」
「むふぅ――」
 
 ビク!
 
「わちゃぁ!!!!!」
「うふぅ――」
 
 ビク!ビク!!ビク!!!
 
 いつしか、ユキちゃんさんの口元から、ヨダレが垂れ始めました。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 なんだか、息遣いも、湿っぽく聞こえます。何かに目覚めてしまったのでしょうか?
 
「うりゃ〜〜〜!!!!!!」
「……………………」
 
 ビク!ビク!!ビク!!!ビク!!!!
 
「……って、アレ?」
 突然、すももちゃんの攻撃に、終焉が訪れました。ユキちゃんさんは、少し残念そうな顔をしつつも、すももちゃんの腕から脱出します。
 ユキちゃんさんは、疲れた顔をして振り返ると、眠っているすももちゃんに問いかけます。
「すもも……」
「んん……」
「わざとやってないか?」
「……………………うん♪」
 ユキちゃんさんは、すももちゃんの微笑みを背に、寮へと帰るのでした。
 
 ――――――――――
 
 ユキちゃんさんは、寮に戻ると台所に向かいました。どうやら、お腹がすいたようです。
 ユキちゃんさんは、冷蔵庫の前に立つと、取っ手に手を伸ばしました。しかし、元の姿なら、腰の辺りに見える取っ手も、今の体では遥か上。その場でピョンピョンとジャンプしてみますが、全く届く気配はありません。
 ユキちゃんさんは、辺りを見回しました。すると、『みかん』と書かれたダンボール箱があるではありませんか。ユキちゃんさんは、それを冷蔵庫の下まで持ってくると、その上に乗ろうと、ダンボールの上にジャンプしました。
 
 ドスン!
 
「……」
 ユキちゃんさんは、ダンボールの中に落ちました。どうやら、底の方が上になっていなかったようです。ユキちゃんさんは、イソイソと箱の中から抜け出すと、ダンボールをひっくり返しました。
 無事、ダンボールの上に乗ることが出来たユキちゃんさん。これで冷蔵庫の取っ手に手が届くようになりました。ユキちゃんさんは、早速、冷蔵庫のドアを開きます。
 
 ボスン
 
 冷蔵庫のドアは、ユキちゃんさんが乗っているダンボール箱にぶつかってしまいました。これでは、ドアは開きません。ユキちゃんさんは、一度ダンボールを降り、ドアにぶつからない所まで、ダンボールを動かしました。
 再び、ダンボールに乗ったユキちゃんさん。冷蔵庫のドアを引くと、ドアは開きましたが……
「アーーーーーー」
 取っ手から手を離すのに失敗したユキちゃんさんは、ドップラー効果を響かせつつ、そのままぶる下がっていってしまいました。ドアが開き切ると、勢いがあったのか、そのまま閉まっていきます。
「ホワーーーーーー」
 
 バタン!
 
 ユキちゃんさんは、ドップラー効果に身を委ねつつ、ダンボールの上に戻ってきました。しかし、同時に、冷蔵庫のドアも閉まってしまいました。
「…………はぁ」
 ユキちゃんさんは、溜め息を吐くと、今度は、慎重にドアを開きます。
 
 ……………………
 
「ふぅ……」
 上手く開くことが出来たようです。
 ユキちゃんさんは、冷蔵庫から、『ななついろ★プリン』と『ななついろ★蒼汁』を取り出すと、冷蔵庫の扉を閉めて、自分の部屋に戻ります。
 机の上に座ると、ユキちゃんさんは、『ななついろ★プリン』の蓋を取りました。このプリンは、上から、イチゴ、オレンジ、レモン、メロン、ブルーハワイ、山菜、ラベンダーと、7種類の味が楽しめる素敵なプリンです。蓋には何故か、『混ぜるな危険』と書かれています。どうやら、混ぜてはいけないようです。ユキちゃんさんは、上から順に食べていくことにしたようです。そして、付属のスプーンを手に取ると、『ななついろ★プリン』に突き刺しました。そのとき……
 
 カサカサカサ――
 
 またしてもアイツは現れました。どうやら、この七色に輝く麗しきプリンを奪おうとしているようです。
「ふふふふふ……飛んで火に入る夏の虫とは、正にこのこと。いつまでも、前のボクだと思うなよ!」
 ユキちゃんさんは、ずれてもいない眼鏡の位置を直しながら、後ろを向いて逃げ出しました。
 ユキちゃんさんが『ななついろ★プリン』から離れると、コードネーム『G』は、『ななついろ★プリン』に向かって突進していきます。『G』が、『ななついろ★プリン』に頭を突っ込みました。すると……ものすごい勢いで、『ななついろ★プリン』をかき回し始めました。
「あっ! あっ!! それ、掻き混ぜちゃダメ!!!」
 ユキちゃんさんは、大慌てです。しかし、時既に遅し。数秒前までなないろをしていた『ななついろ★プリン』は、黒く濁ってしまいました。
 すると、突然、『G』が活動を停止しました。いつも忙しなく動かしている触角ですら、ピクリともしません。
「あれ? やっつけた……のかな?」
 『ななついろ★プリン』には、混ぜると殺虫効果があるのでしょうか? ユキちゃんさんは、恐る恐る『G』に近づこうしました。
 その時、突然、『G』が狂ったように暴れ始めました。方向感覚が無くなっているのか、机の上を縦横無尽に走り回っています。すると、その体が、『ななついろ★蒼汁』のビンを跳ね飛ばしました。『ななついろ★蒼汁』のビンが倒れ、中身が流れ出していきます。その中身は、鈍色、黄土色、肌色、臙脂色、褐色、深緑、群青色をしていました。ユキちゃんさんは、
 (飲まなくてよかった)
 と思いました。
 『ななついろ★蒼汁』のビンが倒れたときに外れたのか、ビンの蓋がユキちゃんさんの足元に転がってきました。拾い上げてみると、『混ぜるな危険』と書かれています。こぼれた『ななついろ★蒼汁』に目を戻すと、やはり、ほどよく混ざり始めています。そして、『ななついろ★プリン』へと、一直線に流れていきました。やがて、『ななついろ★蒼汁』が、『ななついろ★プリン』に到達しました。
 
 ど〜〜〜〜〜ん
 
 爆発音とともに、コードネーム『G』は、窓の外へと吹き飛んでいきました。ユキちゃんさんは、黒い煙を吐くと、仰向けに倒れてしまいました。表面も、少し焦げてしまったようです。ジンギスカンにすると、美味しいかもしれませんね。
 
 ――――――――――
 
 夜の帳が下りる頃、ユキちゃんさんは、目を覚ましました。焦げていたはずの体が、何故か元に戻っています。きっと、ボロボロになったガソダ△が、次の週には元に戻っているのと同じ原理ですね。
「あ……もう、こんな時間。秋姫の所にいかなくちゃ」
 ユキちゃんさんは、魔法の本に乗り、今日もすももちゃんの家へと向かうのでした。

Fin
 
posted by はっぱ at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

目次

ななついろ★ドロップス 短編
〜「さくらいろのほしぞらのしたで」〜
  ・「プロローグ」
  ・第01回「ずっといっしょ……」
  ・第02回「そのであいは、ゆうきのはじまり」
  ・第03回「なでしこのことば」
  ・第04回「わらいごえは、そらのかなた」
  ・第05回「ふたりのてのひら」
  ・第06回「ボクがきえるひ」
  ・第07回「にびいろのしずく」
  ・第08回「せいしろうとぼく」
  ・第09回「さくらいろのほしぞらのしたで」
  ・「エピローグ」
  ・あとがき

冗談企画
〜「オー!ユッキー」〜
  ・「オー!ユッキー その3」
  ・「オー!ユッキー その2」
  ・「オー!ユッキー その1」

ななついろ★ドロップス Short Story
〜「ユキちゃんの一日」〜
  ・「ユキちゃんの一日」
  ・「ユキちゃんの一日 その2」
  ・「ユキちゃんの一日 その3」
  ・「ユキちゃんの一日 その4」
  ・「ユキちゃんの一日 その5」
  ・「ユキちゃんの一日 その6」

ななついろ★ドロップス 短編
〜第5.5話「キミにむけるほほえみ」〜
  ・はじめに
  ・第01回「はじまり」
  ・第02回「たいへんたいへん」
  ・第03回「すもものムチャ」
  ・第04回「ふたりといっぴき」
  ・第05回「ほしのはな」
  ・第06回「すもものなみだ」
  ・第07回「りべんじ」
  ・第08回「ここはどこ?」
  ・第09回「ほしぞらのしたで……」
  ・第10回「さかないの?」
  ・第11回「みんなのねがい」
  ・最終回「キミにむけるほほえみ」
  ・あとがき